平成24年10月号
(第174版)
〜 自己紹介 〜
  
サンヒルきよたけ 療養部  リハビリテーション係 音楽療法士 吉川

 はじめまして。今年の4月より、サンヒルきよたけ療養部リハビリテーション係で働かせて頂いている音楽療法士の吉川路子と申します。「音楽療法って何?」「音楽聞いて癒すの?」と思われる方もたくさんいらっしゃると思いますが、実際は、歌って踊って演奏して、と盛りだくさんの活動を行っています。
 私が音楽療法という言葉を初めて知ったのは中学生の時です。3歳からピアノを習っていた私は、音楽関係の仕事に就きたいと中学生の時に思い、それを知った担任の先生が教えて下さったのがきっかけでした。実際にどのような事をするのかは全く分からず、少し心に残る程度でした。それから、宮崎女子短期大学(現在の宮崎学園短期大学)に進学し、音楽療法コースに入り音楽療法を学ぶようになりました。始めは、この授業のどこが音楽療法なのか疑問ばかりで全く分かりませんでしたが、短大の中で行われている臨床実習や、外での成人や高齢者を対象とした臨床実習を体験し学ぶうちにどんどん音楽療法の魅力に惹かれていきました。音楽で人と共感しあえる、笑いあえる、思い出す、涙を流す、緊張する、癒される、達成感をもてる、一体感をもてる、表現できる、人と関わりがもてる等、様々な気持ちが体験でき表現できるものは他にはないのではないかと思うようになりました。
 ですが、実際に自分が音楽療法を行うことになると、悪戦苦闘の連続でした。一見、すごく楽しそうで、笑いがあって、会話があって、楽そうだなと感じることが多かったのですが、実際には、ピアノを弾きながら、会話し、歌い、対象者の息(呼吸)に合わせる、そして、様子を観察し様々な姿を引き出すという一つの場面だけでも私には精一杯でした。そんないっぱいいっぱいの中でも音楽を通して、対象者の方と気持ちが繋がることが出来る、様々な感情を体験し充実した時間を過ごしてもらうことが出来ると思うからこそ続けてこれたのだと、今実感しています。自分が実践する上で、自分自身が楽しまないと相手にその楽しさは伝わらない、自分の思いを伝えないと伝わらないと思っています。当たり前の事ですが、その当たり前の事をし続ける大切さ、難しさを今でも感じています。 でも、楽しいからこそ続けています。
 「音楽」と言葉にすると少し堅苦しくなりますが、自分の好きなアーティストだったり曲だったり、映画だったりカラオケだったり、日常の中のどこにでも在るものだと思います。そんな身近な存在の音楽を使用して、楽しく音楽をしていきたいと思っています。高齢者の方にとって、音楽は昔からある身近なものであり、思い出であり、大切な記憶と結びついているものだと思います。その音楽を使用して目的を持って、今の生活に反映できるように頑張っていきたいと思いす。どうぞよろしくお願い致します。

〜 マタニティグリーフケア 〜
 
迫田病院 看護師  梅木

 はじめまして。2階病棟勤務の梅木です。今回、エコーリレーを担当させて頂くことになり、正直なところ、何を書いたらよいのか悩みました。悩んだ末、昨年末に体験した「誕生死」を通じて感じたことを書いてみてはどうかと主人から提案があり書くことにしました。
 「誕生死」とは、流産や死産などで出産前後に赤ちゃんを亡くしてしまうことを言い、英語で、“S till born “と呼ばれるそうです。ご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、実際自分が体験するまで知らなかった言葉でした。
 私の場合は、第2子で切迫流産で自宅安静になったりはしていましたが、赤ちゃんには何も問題はないと言われ続け、9ケ月で切迫早産を起こし、入院中に原因不明の子宮内胎児死亡、その翌日に出産という経過でした。悪夢を見ているようで、訳がわからないまま、亡くなってしまっているわが子を出産した訳ですが、病院スタッフから精神的なケアなど手は差し延べてはもらえませんでした。ベテランの医師で分娩費用が安いと評判の病院でしたので、次々に分娩などあり、忙しいのだろうと諦め、グリーフケア所か、挙げれば切りがない程、心ない発言や不適切な対応に耐えた入院生活でした。主人や家族が側にいて支えてくれていなければとても耐えられなかったと思います。
 後で調べて知ったことですが、「マタニティグリーフケア」は日本は遅れており、地方においては尚更不十分で、医療従事者の心ない対応に更に傷付けられた経験者が少なくないそうです。「誕生死」は年間3〜4万件もあるそうで、妊娠して無事に生まれることは本当に奇跡であり、今回の体験で改めて命の儚さ尊さを思い知りました。又、産婦人科と診療科は違いますが、ターミナルケアや手術などで、身体的ケアだけでなく、精神的ケアも重要な現場で働く者として、患者様やご家族に寄り添える看護ができているだろうか、悲しみや苦しみなど思いをくみ取り、グリーフケアが十分にできているだろうかと考えさせられました。乗り越えられたとは言い切れませんが、ただ悲しみに暮れるのではなく、あの子に教えてもらったことを教訓に前に進み、命を全うしてあの世であの子にまた会えた時に親として誇りに思ってもらえるような人間になれるよう日々努力していこうと夫婦で誓っております。
 現在、第3子を妊娠中で、不安がつきまとっていますが、夫を始め色々な人達に支えられ、無事に産まれてきてくれることを祈りつつ過ごしている毎日です。