【経過年表】
97年10月 介護職員(1名)がデンマークで6ヶ月間の研修実施
98年12月 福岡県大牟田市で開催された講演会「デンマーク福祉に学ぶ」に参加
99年02月 介護職員(1名)がデンマークで6ヶ月間の研修実施
99年06月 理事長及び常務理事がデンマーク視察実施
99年 デンマーク在住日本人(1名)が当施設に一時期職員として在籍
99年12月〜00年5月 デンマークの交流生(1名)が施設に滞在
00年04月 デンマークの日欧文化交流学院校長とデンマーク人(2名)が当施設での講演会出席のため来設
01年04月 デンマークの日欧文化交流学院校長とデンマーク人(3名)が当施設での講演会出席のため来設
01年06月 事務長及び管理栄養士(1名)がデンマークで視察研修及びデンマーク研修生受入れ打合せ実施
01年01月〜01年12月 デンマーク交流生(1名)が施設に滞在
02年02月〜02年07月 デンマーク交流生(1名)が施設に滞在
02年11月 研修生派遣準備のためデンマークより学校長(2名)が来設
02年11月〜03年01月 デンマーク交流生(1名)が施設に滞在
03年04月〜03年06月 デンマーク交流生(1名)が施設に滞在
03年11月〜04年01月 第1期研修生(2名)が研修実施
04年12月 第1期研修生の中間評価のため当施設にデンマークの専門学校長(2名)が来設
04年06月 介護職員(2名)及び支援相談員(1名)がデンマーク視察実施
04年08月〜04年10月 第2期生(2名)が研修実施
04年02月〜06年04月 第3期生(3名)が研修実施
08年08月〜08年10月 第4期生(2名)が研修実施
 
【経過説明】
 当施設では、デンマークとの交流・研修生の受け入れを行なっています。この取り組みは、1997年に施設職員がデンマークで生活をしたことに始まります。その後、法人5ヵ年計画のひとつでもある『国際交流』を通して、福祉先進国であるデンマークの思想・ケアを学び、職員の資質の向上を図ること、文化交流を目的とし、2003年に初めての研修生を受け入れました。まだまだ発展段階ではありますが、これまで私達が取り組んできたことを報告します。

 研修生とは、デンマークの『社会保険介護士』の資格取得のため、実習の一環として来設している学生です。『社会保険介護士』とは、日本でいう看護師・介護福祉士・ケースワーカーなどの役割を総合した職種です。この資格取得には、義務教育終了後に、準備教育として1年間の教育を受けます。その後『社会保険介護助手』の資格を取得する為に、1年2ヶ月の教育を受け、さらに『社会保険介護士』の資格を取得するために、1年8ヶ月の教育を受けます。この教育期間中に、3ヶ月の現場実習が4回あり、その3、4段階目として当施設に実習に来ています。実習はデンマークだけでなく、ヨーロッパ5カ国で行なっており、ヨーロッパ以外の施設での実習は、当施設が初めてとなっています。

 当施設では、研修生を受け入れるまでに、主に4つのことに取り組みました。@英会話、Aデンマークへの視察、B受入れ担当者の育成、C評価表の作成です。英会話は、全職員を対象に業務時間中に行いました。視察は、3回、計7名が行ないました。評価表は、デンマークの学校長と共同で作成しました。受入れ担当者は、この評価表を理解したうえで、実習の評価をします。

 1期生は、女性2名、2003年11月から2004年1月に受け入れました。この時の実習は主に入所で実施し、デンマークの法定時間数で行ないました。

 1期生受入れ時に、私達は、言葉の壁・文化の違い・受け入れに対する認識の甘さを痛感することになりました。まず、研修生側の問題点としては、実習内容が学びたいものとはズレがあったことが挙げられます。学びたかった内容は日常のケアだけでなく、日本における社会保障制度・利用者の社会背景・老健における看護業務の在り方など、多岐に渡るものでした。そのため、入所職員だけでは対応できない部分もありました。そして、職員・利用者と思うようにコミュニケーションが図れず、また、過密なスケジュールや慣れない生活が、研修生を精神的・体力的に追い詰めたようです。次に、職員側の問題点としては、語学力に不安があったこと・研修生受け入れの具体的な目的が把握できていなかったことです。職員全員にアンケート調査を行なった結果、なぜ研修生を受け入れているかわからない・学ぶことがあるのか・担当者以外の職員にも負担がかかる、などの意見がありました。
そして担当者は、実習を成功させなければ!というプレッシャーに耐え、研修生と同じように言葉の壁をストレスに感じていました。

 1期生実習終了後の課題として、1点目に、利用者の全体像を把握できるカリキュラムの提供です。メインであった入所だけでなく、通所・相談員・リハビリ・厨房・併設するグループホームにも担当者を配置しました。2点目に、英会話力の向上を図ることです。3点目に、文化交流活動の場を提供することです。1期生受け入れの反省を踏まえ、2期生を受け入れることとなります。

 2期生は、女性2名、2004年8月から10月に実習を行ないました。実習は、評価表に沿って各部署で行ない、また、役場・近隣事業所・医療施設などへの見学を組み込みました。

 役場の協力を仰ぎ、外国人同士の交流会への参加も取り入れました。このことにより、2期生の実習はスムーズに行なえましたが、それ以上に他の職員も、研修生に対する受け入れの気持ちが芽生え、意識の向上が見られ、積極的に英語で話しかけ、関わりを持つようになったことが、実習の充実につながったのではないかと思われます。また、私達職員も、研修生からの「なぜ?」という質問にその都度立ち止まり、再度自分達のケアに関して考える機会を与えられました。そして、ともすれば単調となりがちな日々のケアを見直し、本当にこれでよいのか?と、自問自答できたと感じています。

3期生(前列の3人) ↑第3期生プログラム
(※PDF形式:写真クリック)

 3期生は、女性3名、2006年2月から4月に実習を行ないました。年齢、考え方、生活習慣もそれぞれに違っていましたが、実習に臨む姿勢は、我々にも大変参考になりました。


4期生 ↑第4期生プログラム
(※PDF形式:写真クリック)

 4期生は、女性2名、2008年8月から10月に実習を行ないました。今回の実習生も、以前の学生達と同じように、前向きで一生懸命に実習に取り組んでいました。


 これからもデンマークとの交流を続けていくなかで、『サンヒルきよたけオリジナルケア』の確立を目指していきたいと思います。